月に一度は溺れたい

不真面目に真面目なブログです。感情豊かにセックスしたい。

華奢なのに

白くて滑らかな肌だと、いつも思いながら見ていた手。
華奢なのに、不思議な程に柔らかかった。


昼から2人で出かけた。
私が車を運転し、近くの景勝地を訪れる。
一通り楽しんで、ドライブして、晩御飯を食べて。
いつの間にか、彼の家の前で、車から彼を降ろしていた。

楽しかったです。今日もありがとう。

敬語なしの会話も慣れてきた。
でも、これっていつも通りでは?


なにか今日という日に『特別』を残したい。
昼から2人で出かけたこと自体初めてだったので、それはそれで特別ではあったのだが。
私は車の窓を開け、遠くで見送る彼に向かって大きく手招きする。
不思議そうに戻ってくる彼を目の前に、私はまた緊張していた。
「あの……ありがとう」


ぎこちなく差し出した、さっきまで招いていた右手。
握手を求めることで、私は精一杯だった。
不思議そうに右手を見つめる、ほろ酔いの彼。
にこやかに握り返されて、私も少しほっとする。


その瞬間だった。


するり、と彼の手が私の手をすり抜け、握り方を変えられる。

ふふふ。

いわゆる、恋人繋ぎと呼ばれる。
指が交互になる繋ぎ方。


それは一瞬の出来事で、私たちの手はすぐに解かれた。
困らせようと企てても、翻弄されるのはいつも私だ。
「また、そういうことばかりする……」
そんな可愛げの無い言葉を残して、私は車を走り出させた。