もっと仲良くなれたら
密室。2人きり。迫る時刻。
「○○さんと、もっと仲良くなれたらと思っています。
○○さんは、どう思いますか?」
対峙する。私は緊張し、彼は何故か、不敵な笑みを浮かべている。
少しお時間を頂いても、よろしいですか?
スっと頭が冷めた一瞬だった。彼は補うように言った。
新年度まで待って、リフレッシュしたら考えましょう。○○さんは、今のしんどい状況の中で、たまたま優しくしたのが私だったから、そういう気持ちになっているだけかもしれませんし。
”夏頃から好きでした”
本当に言いたかったのはこの言葉。
とても好意を抱いていただいているとは知ってましたが、そもそも、なんで私なんですか?
なんで、なんて。
そんなの聞いてどうするんだ。
あなたの笑顔にいつも癒されていた。
自分のペースを乱さない、ゆとりのある様子に尊敬していた。
一緒にお酒を飲めるのが良かった。
職場が変わって1ヶ月、しんどかった時に2時間も話を聞いてくれた。
挙げ出せばキリがない。
そんな顔、しないでくださいよ。また今度ご飯行きましょ?
そう言って叩かれた肩が、初めて彼が触れた場所が、しばらく熱くて仕方がなかった。
今朝の夢の中、2人きりのエレベーターで唇を交わした。
彼から私の額に寄せられた唇の感触が、夢から覚めた今でも残っている気がする。
壁に追い詰められて押し付けられた唇に応える私は、空いた手でエレベーターのボタンをまさぐっていた。
そうしていつまでも、いつまでも二人で居たいと、エレベーターを延々と上下させていた。