最初で最後(その1)
最初で最後だと、思ってあなたに会いに行きました。
だから最後まで私はワガママでいられました。
貴方はもっと、ワガママ言っていいんですよ?
今までどれだけ我慢して、頑張ってきたんですか。
あなたの優しさを、独り占めしたいと思ってしまいます。
19時からご飯を食べて、日本酒バーに流れて1:30過ぎまで二人で飲んだ。
予定通り代行を呼んで、私の家経由彼の家で帰ることになった。
車の中で、彼にメッセージを送り、スマホを見るよう合図した。
「家泊まりませんか?笑」
すぐに既読がついたが、返事はなかった。
私の家に着いた時、
支払いはいいから、それじゃあね
と言われてしまい、私は帰宅し彼の車は去っていった。
彼が帰宅しただろうと思われる頃、メッセージが届いていた。
せっかくのお誘いを無碍に、すみません
どうしても今夜、特別な日にしたかった私は、彼にメッセージを送った。
「○○さんのことになると焦ってしまって……遅いのは承知の上ですが、今から会いに行ってもいいですか?」
遅いし、足もないのに
「走っていきます!」
走ると酔いが回って危険ですよ
「歩きます」
こんな感じで、夜中の2時、彼の家に歩いていくことを決意した。
2:40頃に彼の家に着き、電話をかけた。
「ごめんなさい……もうすぐ着きます。帰れと言われれば帰ります」
……せっかくですから、お茶でもどうですか?
お言葉に甘えて、家にお邪魔した。熱々の紅茶をご馳走になった。以前仕事で一緒に出張に行った時に立ち寄ったお店で彼が買っていた紅茶だった。
奇遇ですね、と彼は笑った。
程なくして、外の天気は荒れ始め、傘無しでは帰れなくなってしまった。
外もこんな天気ですし身体も冷えたでしょうから……今夜はうちに泊まってください。
私が使ったあとでびちょびちょですが、シャワーでもどうぞ
シャワーを借り、ブカブカの寝間着も借りて、歯ブラシはホテルに置いてある使い捨てのやつを貰った。
テーブルに改めて座ると、
こんな深夜に30分も歩いてここまで来て、何をしに来たんですか?
と意地悪く笑いながら聞かれた。私は、もちろん特別な時間を貰いに来た訳だけれども、そんなこと言える訳もなくて
「○○さんのことが好きです。好きになったのが○○さんで良かったと思っています。
わがままを聞いてもらってるだけなんだと分かってはいるんです。でも、欲が出てしまう……。心まで欲しいとは言いません。好きでいさせてもらえて、感謝さえしています」
と伝えた。
そんなことを言いに、ここまで来たんですか?
……どこまで真っ直ぐな人なんだ
そんなふうに言われた。
続きます。長くなります。