最初で最後(その8)
……なーんてね
冗談だった。
趣味の悪い冗談だと思った。
忘れるわけないじゃないですか。あんな夜中に30分も歩いてここまで来てくれたんですから
そう言って、おでこをコツンと突き合わせて、頭を優しく撫でてくれた。
そして、
10時か……まだ寝れる
と言い残して彼はまた眠りについた。
11時半頃再び起き上がり、
飯でも食いますか
とトーストと目玉焼き、サラダなどをご馳走になった。
何がどこにあるか分からない私はほとんど手を出すことが出来ず、とはいえ至れり尽くせり過ぎたので、さすがにお皿は洗った。
歯を磨いてテーブルにつくと、再び手を触らせてもらった。
前日は気づかなかったが、以前見た時よりも肌荒れが少し進んでいたようだった。
薬も塗ってるんですけどね
テーブルの端に塗り薬が見えた。
彼の手を一方的に触ってるだけだったのが、彼が私の頬を撫でてきた。
本当に綺麗な肌ですね。ずっと触っていられる
褒められると、嬉しくなる。
いつしかまた、彼の指が私の口の中をまさぐってきた。
本当に、指が好きなんですね
「○○さんの手は……特別なんです」
そう答えると、彼は嬉しそうに満足そうに笑った。
テーブルの別々の椅子に座っていたところを、彼が私の椅子に一緒に腰かけて、更に指で口内を責めてきた。
これからは歯を磨く度に、この指のことを思い出しちゃいますね?
そう言われると、ぞくっと快感が増した。
「椅子から……おちちゃう」
じゃあ続きは、向こうに移動しますか?
肩を抱かれ、二人でゆっくりと寝室に戻った。